藤原定家(ふぢはらのさだいへ) ルキノ・ヴィスコンティ 歴史と美学

藤原定家は、その美しさの追求において、イタリア人の映画監督であるルキノ・ヴィスコンティとならぶわが愛着の深い芸術家である。

ともに貴族。そして時代の転換期にうごめき、滅びの美学とも言える、様式美を構築している。

ヴィスコンティは、その出自とは裏腹に、マルクス主義者だったそうな。一時期はイタリア共産党員でもあった。

この映画監督のドイツ物が、非常に美しく、さらに思想性が高く、今の映画には見られない孤高の輝きを放っている。

もっとも好きなものは、最後の王様 ルートヴィヒ二世をモデルにした『ルートヴィヒ』。

俗物に描かれパトロンから金を吸い取って時代の頂点に立ったリヒャルト・ヴァーグナーとの対比。
本物の芸術家以上に芸術家であった王が、時代とともに雨下でのたれ死にする末路が悲しい。

トーマス・マン原作で、グスタフ・マーラーをモデルとした『ベニスに死す』。
むろん、マーラーの音楽(交響曲第5番第4楽章アダージェット)が効果的に使われている。

上記二作品を含むドイツ三部作と言われる『地獄に堕ちた勇者ども』は、三島由紀夫も絶賛したらしい。
ただし、邦題がよろしくない。もっとも相応しいのは『神々の黄昏』である。

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